患者にとって命綱
高額療養費制度改悪を全面凍結
埼玉県生活と健康を守る会連合会事務局 酒井 康(67)
新年度予算案に盛り込まれた高額療養費制度の負担上限の引き上げについて、がんや難病患者といった当事者の声が後押しになりいったん凍結することになりました。再度衆議院での予算審議が必要です。制度を改悪しないでとの声と凍結になった改悪内容を紹介します。
高額療養費制度は患者にとって命綱です。
私は2年半ほど前、自転車事故で左大腿骨を骨折し、患部に人工関節が埋め込まれています。入院当時、「医療費はどれほどの負担になるのだろうか」と心配していました。
ところが、高額療養費制度のおかげで、60万円(手術・リハビリ代で食事・ベッド代など自費分除く)近くかかるところ、負担上限額の5万7600円(70歳未満、区分:エ=標準月額報酬26万円以下=の所得区分)で済み54万円ほど減免になりました。
支払い方法は、協会けんぽに「限度額適用認定証」を申請し認定証を医療機関に提出したことで、医療費全額60万円を一旦全額支払わなくても、負担額の支払いで済みました。
形だけの譲歩で政府案ごり押し
今国会、衆議院の予算審議で、「若い世代の社会保険料の負担額軽減」と称して高額療養費制度の個人負担の上限額引き上げの政府案が提出されました。
抗がん剤治療など高額な医療費を負担している患者にとって、現行の負担額でも切り詰めた生活の中、物価高も加わり治療を断念せざるを得ない高額療養費制度の改悪です。
それを受け、がん患者の代表・全国がん患者団体連合会(全がん連=一般社団法人)が凍結を強く要請したのに、政府は今年8月から実施するとしていました。
当事者らの声が引き上げを凍結
3月7日の参議院での審議でも与党からも「夏の参議院選挙が闘えない」と政府案凍結の声が上がり、野党からは制度改悪撤回し凍結せよとの訴えがありました。
さらに「当事者ぬきに決めるのはおかしい」「抜本的に見直すべき」との論戦も起こり、石破茂首相も、来年に向けて高額療養費を利用している患者の実状を把握し、秋までに案を再提出したいと8月からの実施を撤回しました。
凍結ではなく完全な撤回を
インターネットも駆使して本制度に対して意識を高め、医療機関や支援団体と連帯して撤回まで闘いましょう。
(2025年4月6日号「守る新聞」)